Boat-Practice

なぜボートレースは“予想”がこれほどまでに奥深いのか?

ボートレースに魅せられたファンの多くが口にするのが、「当たりそうで当たらない」「読みが当たったときの快感がたまらない」という言葉だ。
この“予想”こそが、ボートレースをただのギャンブルではなく、“読み合いのスポーツ”として成立させている。
記念すべき第1回のコラムでは、この「予想の奥深さ」について、元選手、解説者、予想屋、それぞれの視点を交えて掘り下げてみよう。


◆ 予想の要素は「風・潮・モーター・選手・枠」…複雑であるがゆえに魅力的

まず、ボートレースの予想を難しくしている最大の理由は、「変数の多さ」だ。
たとえば中央競馬であれば、コースの違い、馬の状態、騎手、展開などが主な要素になるが、ボートレースではこれに加えて、気象条件(水面状態)、モーターの機力差、スタート勘、枠の利、展示タイムと、あらゆる要素が複雑に絡み合ってくる。

特に風と潮。この2つは、時間帯や開催地によって大きく影響を及ぼす。
例えば鳴門や若松のような潮の干満が激しい水面では、朝イチとナイターで全く別物のような水面になることがある。
風向き一つでインの利が無くなったり、2コース差しが刺さらなかったりする。
「今日は満潮が8:30、風は向かい風3m。午前中は逃げが決まりにくいだろう」
そういった読みが的中したときの快感は、他の公営競技にはないボートレース特有の面白さだ。


◆ モーターと整備力の読み合い

次に、予想における重要なファクターの一つが「モーターの仕上がり」である。
ボートレースでは節ごとにモーターの抽選があり、当たり外れが大きい。
特に初日から中盤までは、「どの選手がどう整備して仕上げてくるか」という“見えない努力”の部分が予想に絡んでくる。

選手によっては、整備が得意なタイプ(例:坪井康晴選手や瓜生正義選手)もいれば、乗り心地重視で微調整しかしない選手もいる。
また、節間でグリグリに出ていたモーターでも、整備を失敗してしまえば一気に凡機になることもある。

このあたり、展示航走や直線タイム、プロペラの形状を見ながら、
「この選手は昨日より伸びが良くなってるな」
「回り足が良化してるから、インなら逃げられるかも」
といった“プロファイリング”的な視点が必要になる。これが予想をさらに面白くしている。


◆ 枠なり進入ではない“動き”を読む

もう一つ、予想に奥行きを加えるのが「進入の読み」だ。
最近では枠なり進入が主流になってきているものの、ベテランやF持ち選手がいると前付け、または深インになる展開もある。

特に地元戦や周年記念では、「どこまで前に入るか」「どこまで抵抗するか」といった駆け引きが水面外で行われる。
たとえば、平和島での前付けであれば、深くなる=スタート難しい=イン不利という展開になる。
ここを読み切って、外枠の選手のまくり差しやカドまくりを狙い打つ…
こうした進入読みが的中したときの快感は格別だ。


◆「買い方」も含めて予想である

そして最後に触れたいのが、“予想=舟券の買い方”という点だ。
どれだけ展開が読めていても、3連単の組み合わせで迷ってしまえば的中は遠のく。
時には「本命から裏目も押さえる」「あえてヒモ荒れ狙いのボックスで勝負する」といった、買い方の戦術が大切になる。

玄人の中には、展開よりもオッズ重視で「回収率」に全振りして舟券を買う者もいる。
一方で、「推し選手の頭固定で夢を買う」スタイルも根強い人気がある。
どんなスタイルであれ、“自分なりの軸”を持っていることが、ボートレース予想を続ける上でのコツだといえる。


◆ まとめ:予想とは“情報戦”であり“人間ドラマ”

ボートレースの予想は、単なる数字の組み合わせではない。
水面、天候、モーター、進入、そして選手の心情までを読む“情報戦”であり“人間ドラマ”だ。
だからこそ、1レースごとに“物語”があるし、だからこそファンはその物語に熱中する。

的中しても、外れても、また次のレースに挑みたくなる。
それが、ボートレースの予想の奥深さであり、最大の魅力なのだ。

← コラム一覧に戻る