イン最強説の真実 〜現代ボートの勝ち筋を探る〜
ボートレースを語る上で、避けては通れないのが「インコースは強い」という定説だ。
実際、統計的に見ても1コースの1着率は最も高く、常に信頼されているコース位置である。
だが、「インが強い」と一口に言っても、果たしてそれは本当に“絶対的”なものなのか?
今回はこの「イン最強説」にスポットを当て、数字だけでなく背景にある戦術・水面・選手心理など、様々な観点から検証していこう。
◆ 数字が物語る「イン最強」の現実
まず、データ的な話から入ろう。
2024年の全国平均において、1コースの1着率は約54%前後。
レース場によっては住之江のように60%を超えるケースもあれば、戸田のように40%を切る場もある。
この数字だけを見れば、「インを買っておけば半分は当たる」という安心感がある。
ただし、ここで忘れてはならないのは、「1着になる確率が高いだけで、オッズとのバランスが悪い」という点だ。
イン逃げ1点で勝負しても、配当はガチガチ。
3連単にしても「1–2–3」が売れすぎて妙味がないケースが多い。
つまり、“当たる舟券”ではあっても、“儲かる舟券”とは限らないのだ。
◆ インが強い=予想が楽、ではない
「じゃあインを切れば穴が狙える」と単純にはいかないのが、ボートレースの奥深さ。
インが逃げるかどうかを見極めるには、実はかなり高度な予想力が必要になる。
ポイントになるのは以下のような要素だ:
- スタート力(ST):インの選手がコンマ10前後で安定して踏み込めるタイプかどうか
- モーター評価:出足・回り足がしっかりしているか
- 水面状況:風向き・波・潮の影響で、インが流れやすくないか
- 他の枠の強さ:外に自在派や強力な差し屋が控えていないか
- 進入の深さ:前付けによって深インになると、逆にインが苦しくなる
これらを丁寧に読み解いて、「インは信頼できるか否か」を見極める。
それが、“イン逃げ狙い”の舟券で勝つための大前提になる。
◆ 強いインと、弱いインの見分け方
では、実際に予想する際に「これは強いインだな」と判断する基準はどこにあるのか?
まず挙げられるのが、スロー水面+スタート巧者+モーター上位という“鉄板条件”の組み合わせ。
たとえば、住之江ナイターの1号艇・毒島誠選手・モーターA級であれば、逃げの可能性はかなり高い。
逆に、「F持ちの若手が1号艇で、潮位が高く流れやすい水面」という状況なら、一気にインの信頼度は下がる。
また、選手の“インで逃げきれない癖”というのも意外と馬鹿にできない。
A1選手であっても、イン戦でまくられやすい傾向がある選手も存在する。
このあたりは、節間のイン戦成績やSTタイミング、コース別成績を見ておくと見抜きやすい。
◆ 水面別の“イン信頼度”ランキング
水面特性によってインの信頼度は大きく変わる。
以下は、一般的に“イン有利”とされる場、逆に“インが弱め”の場をざっくり分けたものだ。
◎インが強い水面
- 住之江(静水面+狭水面+スロー向き)
- 蒲郡(ナイター+水面が広くない)
- 丸亀(ナイター+向かい風でも流れにくい)
△インが厳しい水面
- 戸田(ピット離れ+狭いコースでまくられやすい)
- 江戸川(荒水面+風+潮+まくり水面)
- 芦屋(潮流の影響+干満で難易度高)
こういった“場所のクセ”を把握しておくことも、インの信頼度を見極める上で非常に重要になる。
◆ イン逃げだけじゃ勝てない時代へ
現代のボートレースは「イン逃げの確率が高い=簡単に儲かる」とは言えない。
特に予想力の高いファンが多い記念レースやSGでは、イン逃げを買うにも“買い方”の工夫が必要だ。
たとえば:
- イン逃げを軸にしつつ、2着3着の穴選手を絡めて高配当狙い
- 「1–流–3」など、2着を荒らす買い方
- インが飛ぶ可能性に張って、2コース差しの「2–1–流」や「3–2–流」などの逆転目を押さえる
このように、イン逃げを買うにも「どう買うか」が問われる時代になっている。
◆ まとめ:インは強い、でも“予想をサボると痛い目にあう”
「イン最強説」は確かに事実だ。
だが、それを鵜呑みにして“思考停止で1–2–3”を買っていては、すぐに軍資金は底をつく。
重要なのは、“このレースは本当にインが逃げられるのか?”を毎回真剣に考えること。
時には思い切って1号艇を切る決断も必要だし、逆に「ここは逆らわず逃げを信頼するべき」と判断する柔軟性も必要だ。
それが、現代ボートレースにおける“勝てる予想”の基本である。
次回のコラムでは「スタートは“技術”か“感覚”か?〜コンマ0秒の世界〜」というテーマで、スタートの奥深さに切り込んでいきます。
プロのスタート力、F持ち選手の葛藤、展示と本番のギャップなど、見どころ満載でお届けします。
お楽しみに!