Boat-Practice

モーターの当たり外れと整備力 〜機力差は予想できるのか〜

ボートレースにおいて、もっとも“目に見えない差”が現れるのがモーター性能だ。
選手の技量やスタート勘、水面の特徴は目に見える部分が多いが、モーターに関しては「展示タイムやレース映像から読み解く」しかない。
しかも、モーターには“当たり外れ”があり、整備や調整によって“化ける”こともある。
まさに、予想における最も“奥が深く、差が出る”ポイントと言っていいだろう。

今回はこの「モーター」にフォーカスし、ファン目線で“どう読み解けばいいのか”を深掘りしていく。


◆ モーターには“くじ運”がある

まず大前提として、ボートレースでは節ごとにモーター抽選がある。
選手たちは節の初日に、既に何節も使い込まれているモーターを引き当て、その節間ずっとそのモーターを使い続ける。
ここに大きな「くじ運」が絡む。

モーターはエンジン性能だけでなく、整備状況やプロペラとの相性によって“伸びる”かどうかが変わる。
特に“引き強”の選手が、近況成績上位のエース機を引いたときなどは、初日から注目が集まる。

では、「当たりモーター」「外れモーター」とはどう見分ければいいのか?


◆ 勝率・2連対率・3連対率を見る

モーター情報は、各ボートレース場の出走表に詳細に記載されている。
中でもチェックしたいのが、2連対率と3連対率だ。
2連対率が40%以上、3連対率が60%以上あれば、エース級の可能性がある。
逆に、2連対率が20%以下、3連対率が30%台となると、かなり“仕上げが必要なモーター”と見ていい。

ただし注意したいのは、「勝率が高い=その選手にとって出るとは限らない」ということ。
前の使用者との相性や整備スタイルが違えば、突然凡機になることもある
ここから先が、予想の腕の見せどころだ。


◆ “出ているモーター”を見極めるには?

では、モーターが実際に出ているかどうかは、どこで見れば分かるのか?

最も信頼できるのが展示航走(特にスリット近辺)とタイムだ。
以下のような視点で見ていこう:

◯ 直線タイム(伸び)

→ 同じ展示コースで他艇より頭ひとつ出ていれば「伸び型」と判断できる。
特にスリット付近で「すっと伸びる」ように見えれば、まくり展開の可能性大。

◯ 回り足(出足・ターン後の加速)

→ 周回展示の旋回を見て、「回った後に一気に加速している」かがポイント。
ターン後にモタついていれば、出足が弱い証拠。

◯ 乗り心地(安定性)

→ 重心がぶれずに滑らかに旋回していれば、乗り心地は良好。
逆に、ターン時に外に膨れたり、バタついたりしていれば調整が不十分。

これらをレース直前の展示で見抜けるようになると、「実戦で通用する機力かどうか」の判断がついてくる。


◆ 整備で“化ける”選手、整備が苦手な選手

機力差を語る上で忘れてはならないのが、選手の整備技術だ。
「当たりモーターをさらに伸ばす」「外れモーターを中堅まで引き上げる」
この2つを実現できる選手は限られている。

◎ 整備巧者の代表例

  • 瓜生正義:モーター調整に繊細な感覚を持つことで知られる。節間で着実に仕上げていく。
  • 坪井康晴:整備力とペラ調整に定評あり。数字以上に“舟足”を作れる職人。
  • 赤岩善生:整備+レース運びのうまさで、地味に高機力を引き出すタイプ。

逆に、若手や技量の浅い選手の中には「整備が苦手」で、
「良いモーターを引いても活かしきれない」「乗り心地が合わずに凡走」というケースも多い。

予想を組み立てる上では、
「モーターはいい、でもこの選手では伸びないかも」
という視点も持っておくべきだ。


◆ “中間整備”と“ペラ交換”にも注目

出走表に「中間整備あり」や「ペラ交換」などの記載があれば、これも要注目。
整備士による部品交換や選手自身のペラ調整によって、突然機力が上向くこともある。

実際、「前半はまるで出てなかったのに、後半から急に展示タイムが良くなった」なんてケースは珍しくない。
こうした変化は、データでは追えない“気づいた者勝ち”の領域だ。
展示を見比べて違和感を察知できれば、穴舟券につながるチャンスになる。


◆ モーターは“生き物”、だから面白い

最終的に、モーターとは非常に繊細な“生き物”のような存在だ。
整備ひとつで変化し、選手との相性でもパフォーマンスが変わる。
数字だけでは見えない、“水面下の情報戦”こそがボートレースの予想を奥深くしている。

同じモーターでも、
「A選手が乗ったら連対率60%」
「B選手が乗ったらまったく絡まない」
――そんなことが日常的に起きている。

だからこそ、展示航走・直線タイム・選手のコメントといった情報を総合的に読み解く力が舟券力に直結する。

 

 


 

 

次回予告

次回のコラムでは、
「水面特性と風・潮の読み方 〜場ごとのクセを知る〜」
というテーマでお送りします。

各レース場が持つ独自の“クセ”や、“時間帯・季節・天候”による影響の違いに注目。
逃げが利かない時間帯、まくりやすい水面、潮の満ち引きで展開が激変する――
そんな“水面との対話”から、勝負どころを見極めていきます。

お楽しみに!

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