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ボートレース平和島の真価 〜“都会の荒波”が生む、静かなる狂乱〜

ボートレース平和島。東京都大田区、羽田空港のほど近くという都会の一等地にありながら、ここは静かなる荒れ水面の代名詞

「平和島は読みにくい」「インが飛ぶ」「万舟製造機」といった声が後を絶ちませんが、決して運任せの水面ではありません。
むしろ、風・水面構造・モーター・地元勢の技量といった多様な要素が複雑に絡み、“読みが当たればガツンと取れる”実力派の勝負場でもあるのです。

本コラムでは、平和島の魅力と攻略のカギを、5つの視点から丁寧に解き明かします。


1. 首都圏に潜む“風のトラップ”:1コースが鬼門になる日

平和島の特徴としてまず挙げたいのが、「インが弱い」という点。
実際、1コースの勝率は全国でもワーストクラス(40〜45%)で、近年でも常に下位争いをしています。

これは偶然ではなく、風の影響が極めて大きいから。特に、

  • 強い向かい風(3m以上)
  • 海から吹き上げる斜め風

この2つの状況では、インがターンマークで流されやすくなり、差しやまくり差しが入りやすくなるのです。
それに加えて、スタートが届きにくくなるため、まくりの攻撃を受けやすいという弱点も。

結果、センター勢の攻撃が炸裂 → インが飲まれる → 外の展開突きで万舟決着
という“平和島劇場”が生まれます。


2. 「狭水面+静水面」ゆえのテクニカル勝負

平和島の水面は、周囲を高い建物で囲まれた静水面
波こそ起きにくいものの、水面幅が狭く、1マークまでの助走距離も短いため、展開は非常にタイトで読みづらい

つまり、「自分が思った通りに回れない」「他艇にプレッシャーを受けやすい」といった、選手同士の“間合いの戦い”が生まれやすい水面なのです。

さらに、ピットから1マークまでの距離が短いため、前づけ(外枠からインを奪う動き)も成立しにくい。そのため進入は基本的に枠なりになりやすい一方、助走距離が短いことでまくりが決まりやすい場面もある。

このあたりの「まくるか差すか」「握るか引くか」の判断がレースを分け、技術の差が顕著に出る場でもあります。


3. モーター性能の差が極端に出る

平和島では、モーターの出来が舟券に直結しやすいという特徴もあります。
なぜかというと、風や助走距離の関係で、パワー勝負になりやすい場面が多いから。

特に注目すべきは、

  • 行き足の良さ
  • 伸びの鋭さ
  • スリット後の加速感

この3点。展示気配や整備コメントで「足がついてきた」「伸びがある」といった発言が出たら、信頼度は一気に高まります

逆に、どれだけスタート勘に優れている選手でも、エンジンが劣勢だと握っても流れてしまう、追い上げが効かないといった場面が出てきます。

予想の際は、モーターの2連対率だけでなく、実戦での気配や整備後のコメントを重視して見ると精度がグッと上がります。


4. 地元選手のアドバンテージと注意点

平和島は東京支部を中心に、近隣の神奈川、埼玉、群馬支部の選手がよく出走してきます。
なかでも、地元東京支部の選手は“水面慣れ”という点でアドバンテージがあり、信頼を置いて良い存在です。

特に、

  • 長田頼宗
  • 石渡鉄兵
  • 阿波勝哉(元祖・自在ターン)
  • 永井彪也

などは、“平和島巧者”として安定した成績を残しています。

ただし、逆に言えば「遠征組が苦戦しやすい」のも事実。
特に、若手選手やB級選手が1号艇を引いたときには、人気に反してイン逃げできず飛ぶというパターンが目立ちます。


5. スタート事故と返還率が高め

平和島のもう一つの特徴が、フライング・出遅れが比較的多いレース場であるという点。

これは、助走距離が短いことでスタートタイミングが非常にシビアになるため。スリットでの踏み込み判断が難しく、「スタートは行きたいが、波に負けて届かない」「行きすぎてF」といった事例が少なくありません。

このため、オッズ妙味を狙うなら“スタートに不安がある選手が1コースに入ったとき”を狙い目とするのも一手です。

また、スタート展示やコメントで「スリットが合わない」「踏み込みに不安」といった表現が出たら、その選手を軸にせず展開予想から外す判断も必要です。


平和島攻略の“6つの鉄則”

平和島で勝ちを拾うには、以下の6点を押さえることが重要です:

  1. 風速・風向きを毎レース確認せよ
     → 向かい風=イン不利、差し・まくり差し注意
  2. モーター気配とコメントは必読
     → 行き足・伸びが良ければコース不問で勝負可
  3. イン逃げは“選手によって”信頼度が変わる
     → 特に遠征選手の1号艇は過信禁物
  4. 地元支部・水面経験値の高い選手を評価
     → 特に東京・神奈川の選手は水面攻略がうまい
  5. 進入は枠なり傾向が強いが、助走距離に注目
     → まくりが決まりやすいコース配列に警戒
  6. スタート事故・波乱も視野に入れる
     → 人気選手のスタート不安発言には要注意

まとめ:荒れ水面の“理”を読む場、それが平和島

「都会の競艇場=穏やかな水面」と思われがちですが、平和島はむしろ“情報と展開の読み合いが全て”の知的水面です。

一見するとイン逃げが信頼できず、予想も難解。だが、風・展示・整備・地元意識といったファクターを多角的に読むことで、他場では拾えない高配当に手が届くチャンスが豊富な場でもあります。

だからこそ平和島は、勝てる人と勝てない人の差が最も顕著に出る場の一つとも言えるでしょう。
難解だけど面白い。そんな“大人の水面”を、あなたもぜひ攻略してみてください。

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