Boat-Practice

今垣光太郎|“天才と狂気の境界線”を走る孤高のボートレーサー

ボートレースの歴史において、「唯一無二」と呼ばれる選手は限られている。
そのなかで間違いなく、“天才”と“異端”の両方を体現してきた男が――今垣光太郎(福井支部)だ。

「美しいターン」「鋭いスタート」「大胆なまくり差し」「読み切る勝負勘」
そのすべてを併せ持ち、さらには整備や水面対応までトップレベル。
まさにすべてを自分でコントロールする完全体レーサーとして、長年ボートレース界をけん引してきた。


今垣光太郎の“各コースにおける勝負手と傾向”


■ 1コース進入時|逃げではなく“仕掛けて抜く”タイプ

今垣の1コースは、「守る逃げ」ではなく“攻めて制する”タイプのイン戦だ。
スリットはコンマ13前後で安定しており、出足に仕上げて一瞬の“艇の起こし”でリードを取る。
1マークでは、スタートが並ばれても旋回の鋭さだけで先手を取れる技術が光る。

特に、“差されそうになってから残す”場面が多く、これは今垣特有の「ターン出口での艇の向き」と「後伸び」での押し返しが大きい。
整備での後伸び重視のセッティングもこの強さを支えている。


■ 2コース進入時|勝負勘で切り込む“超一級の差し”

今垣の2コース差しは、他選手より1艇身深く入ってくる印象
引き波の向き、内艇のターンミス、外の攻め、すべてを読み切ってから仕掛けてくる。

ターンマークを超スピードでかすめながら、出口ではすでに艇を内向けに制御している
これが「美しすぎる差し」と評される所以だ。

SGや記念での2コース勝利も多く、相手が強いほど燃える勝負師の性質が顕著に出るコースでもある。


■ 3コース進入時|まくり差しの完成形、勝率を支える主戦場

3コースは今垣の「職人芸」そのもの。
スリットで出るでもなく、遅れるでもなく、絶妙なタイミングで最短コースを差し切る
“握る”のではなく、“突く”。まさにそれが似合う攻撃方法だ。

彼のまくり差しは、“隙を突いた”というより“隙を作らせた”ような自然さがあり、他艇からすれば「気づいたら抜かれていた」感覚になる。


■ 4コース進入時|ダイナミックなまくり、破壊力◎

4コースからは、今垣の“狂気”が垣間見えることも。
特にピット離れが決まり、カドを取ったときのレースはスタートから一気にまくりきる姿勢が明確

そして、握ったときのターン角度が深く、内艇を一気にねじ伏せる破壊力がある。
整備で仕上がっているときには「この人だけ別次元」というようなスピード感が出るのもこの位置だ。

展示で直線タイムが良い時の今垣4コースは、一発狙いの舟券妙味が非常に高い


■ 5・6コース進入時|“最後方”でも狙いを外さない獣の眼

今垣は6号艇でも舟券を買える数少ない選手。
6コースからでも決して“流して回る”だけではなく、仕掛けどころがあれば確実に突いてくる

その鋭さは、1Mだけでなく道中のターンにも表れており、
「無理な全速」ではなく、“差せる隙間だけ狙う渋い戦い方”で舟券に絡む。

整備で出足を強化してくると、6コースでも最内まくり差し→バック浮上→道中逆転というケースが多くなる。


整備・調整力|“数値ではなく感覚”で仕上げる天才肌

今垣の整備は、近年の“理論派”とは正反対の“感覚派の極み”である。

特徴は以下の通り:

  1. モーターのクセを“乗って感じる”ことで調整方針を決める
  2. 出足+回り足型に仕上げて、旋回勝負に持ち込む
  3. 展示タイムが出なくても本番で仕上げてくるタイプ

コメントでは「よく分からない」「回ってみないと」といった言い回しが多く見られるが、
実際は乗った感触と回転音、エンジン音で“整備のタイミング”と“ペラ角度”を判断している

時にそれが的中しすぎて、“整備後の劇的変化”を見せるのも今垣の怖さだ。


総括|今垣光太郎という“時代を超える存在”

今垣光太郎は、もはやボートレースという枠を超えて、“個人が1ジャンルになった存在”といえる。

スピード、勝負勘、整備センス、そして長年一線で走り続ける持続力。
どれをとっても異次元であり、20代のSGレーサーたちが「憧れの選手」に彼の名を挙げるのも納得である。

すでにベテランの域に達しながらも、いまだSGで勝負圏に絡むその姿は、
“天才とは、時代の変化に抗わずに溶け込める者”だと教えてくれる。

静かに燃える炎のように、今垣光太郎の勝負魂は、いまも水面に生きている。

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