Boat-Practice

湯川浩司:鋭さと爆発力、勝負勘で切り裂く“大阪の超攻撃型レーサー”

ボートレース界において、「スタートが見えている」と言われる選手は数えるほどしかいない。その中で20年近く、常に“そのひとり”として語られてきたのが湯川浩司(ゆかわ・こうじ)である。

豪快なまくりと正確無比なスタート、そして整備力に裏打ちされた舟足。これらすべてを武器に、SG戦線で長年にわたって存在感を放ち続けている攻撃型の代表格である。

湯川の魅力は、単に“握る”だけではなく、状況に応じて握りも差しもこなせるレースセンス、整備によって自在に戦法を変えられる適応力にある。今回は彼のコース別戦術、整備傾向、そしてレーサーとしての総合評価を掘り下げていく。


◆ 1コース:スタート勝負の速攻型、“鋭く回して押し切る”逃げ

湯川の1コースは、スタートで主導権を奪い、そのまま逃げ切る王道スタイル。特徴的なのは、そのスリットの鋭さ。0.10〜0.12の範囲でビシッと揃えることができ、プレッシャーのかかるSGの舞台でもその精度はブレない。

ターンでは、旋回半径を小さく保ちつつもしっかりと握り切り、出口での加速と直線の伸びで後続を突き放す。逃げの中でも「押し逃げ」と呼ばれるパワー型であり、回り足が整えば絶大な信頼度を誇る。

スリットが深くなっても対応力があり、ピット離れから主張するタイプではないが、進入は譲らず、深インでもスタートで決める勝負根性を見せる。


◆ 2コース:握る判断が光る、“攻める2コース”

湯川の2コース戦は、いわゆる“差し屋”とは異なる。1号艇の足やスタートを見て、攻めると判断すればしっかり握るという、極めて攻撃的なコース運びを見せる。

もちろん、差すべきときには差す。だが、湯川の場合は差し一辺倒ではなく、0.08前後の踏み込みからの握りマイも選択肢として持っている点が強み。競る場面でも艇を浮かせず、キレイに回して残す技術があるため、2着・3着の信頼度が極めて高い

SG・G1では2コースからでも舟券の軸になりうる稀有な存在で、「1着を狙いに行く2コース」を体現している選手だ。


◆ 3・4コース:“勝負型”の真骨頂、カドから一気の仕掛けが代名詞

湯川の魅力が最も際立つのが、3・4コースからの一撃まくり、まくり差しだ。3コースからはスリットで覗けば迷わず握り、出られなければまくり差し。旋回スピードが速く、出口で舟をしっかり立てる技術があるため、どの攻め方でも連に絡んでくる。

特に4コースからのカド戦は、湯川の代名詞といってもいい。“狙って取ったカド”の時は、伸び足を強化して0.08前後で全速。スリットで覗いて一気に飲み込むまくりは、まさに一撃必殺。

また、攻めが決まらなかったときにも道中で着を拾える巧さがあり、“勝ちも拾いもこなせる”センター巧者として、長年トップを走り続けてきた理由がここにある。


◆ 5・6コース:展開読みと捌きで浮上、決して“消えない”外枠

湯川の5コースでは、センター勢が攻めた展開をまくり差しで突く形が基本パターン。0.10前後のスタートでしっかりスリットに乗せ、「差す」か「握る」かを瞬時に判断するセンスが抜群だ。

6コースからもまったく軽視できない。スロー勢の凹みがあれば握って飛び込むし、展開が割れれば内に差してバックで浮上。足の仕上がりに応じて臨機応変にコース運びを変える器用さがあり、舟券的には「外だから切る」は通用しない。

とくに記念戦では、実力が伯仲するなかでも“外枠でも気配がある”選手として舟券的に支持されることが多い。


◆ 整備力:出足・伸びを自在にコントロール、調整で勝負を作る

湯川は整備面でも定評があり、レーススタイルに応じて“出足型”にも“伸び型”にも変化させることができる整備センスを持つ。プロペラ調整に非常に敏感で、細かい変化を感じ取って仕上げを整える。

カド戦が予想されるときは伸び寄りに、イン戦や差し構えのレースでは出足重視。とくに、回り足・立ち上がりのフィーリングを重視しており、「回ってから押す」足を作るのが得意。

また、劣勢なモーターを引いたときでもシリーズ後半には仕上げてくることが多く、“整備力で浮上する選手”としての信頼感も高い


◆ 総括:“攻撃こそ最善の防御”――勝負の匂いを漂わせる本格派

湯川浩司という選手は、今も昔も変わらず“攻め”を軸に戦ってきたレーサーである。そのスタイルには、一貫した「勝ちに行く」意志と覚悟があり、攻めが不発でも“拾い”ができる柔軟さも備えている。

冷静さと大胆さを共存させ、整備で武器を強化しながら、どの枠番でも“勝負の気配”を纏ってレースに挑む。
ベテランと呼ばれる年齢に差しかかっても、攻撃性と調整力、戦略眼を武器に記念戦線で存在感を保ち続けているのは、まさに“勝負師”としての完成度の高さゆえである。

これからも湯川浩司は、スタートで勝負をかけ、旋回で勝敗を決める“攻撃型の象徴”として、ファンの期待を背負い続けるだろう。

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