藤原啓史朗:攻撃と緻密さを併せ持つ“変幻自在の万能型”
デビュー後から非凡なターンセンスと前付けの強さが目立ち、最近はG1戦での活躍も増えるなど、急成長中の中堅レーサーである。
どのコースからでも仕掛ける姿勢と、崩れにくい走りを両立するそのスタイルは、“外枠でも消せない存在”“内枠なら軸にできる万能タイプ”として注目されている。
本稿では、藤原啓史朗のレースを読み解くために、①コース別戦術、②整備力、③総まとめの順で詳しく分析していく。
◆ 1コース:「仕掛ける逃げ」で信頼構築
藤原の1コース戦は、基本的に先マイ逃げ型を軸に据えつつも、スリットで開ける場面では強気の握り逃げも選択肢に入れる柔軟さが光る。
スタートは0.12〜0.14あたりを中心に攻め、ターンの旋回では艇を小さくまとめつつも出口で伸びを活かす“力を隠しつつ使う”タイプだ。
強風や荒れた水面にも冷静に対応できる適応力があり、「強い相手でも退かさない、逃げの自信が見える1号艇」として舟券の信頼度は非常に高いと言える。
◆ 2コース:差し・握り・展開読みの器用さで浮上
2コースでは、展開に応じた差しと握りの使い分けが得意だ。スリットの隊形が良ければ差し切りに行き、逆に優位な形であれば握ってまくりに出る柔軟戦法が光る。
1マークの旋回後に艇を伸ばす形を作ることで、「2着以上を確保しつつ、場合によっては1着も狙える」安心感のある戦いが展開される。
ただし無理はせず、「確実性を優先する差し」の選択が多いため、舟券で軸候補となる2号艇として安定感がある。
◆ 3・4コース:勝負所で鋭い仕掛けを使い分ける自在戦
センター戦こそ藤原の真価が明確に出るところだ。
多くの場合、3・4コースからはまくり差しを軸に展開読み+スリットで判断するスタイル。
3コースならスリットで覗けば鋭く握ってまくり差しに切り替え、覗けなければ差しに構えて着を拾う切り替えスピードが速く、“迷いのない攻め”が信条だ。
4コースでも同様で、しっかりと伸びを作っていればまくり粘り、足色が伴わなければ展開読みで差しに切り替える。その判断力と適応力の高さが、センター枠からでも舟券に絡む根拠となっている。
◆ 5・6コース:展開・捌き・粘りの“外枠巧者”
外枠になっても藤原は強さを発揮する。その戦法は3本柱だ:
- センター勢のまくりに乗ってまくり差しから浮上する機動力
- 無理せず差し構えに回り、道中で粘って内を突いて伸び返す立ち回り
- 舟足に合わせてスロー勢の攻めに乗る握りまくりなど、複数の戦法を状況に応じて使い分ける
6コースからでも3着圏内に絡む可能性が高いため、舟券からは「軽視できない大外の職人枠」として評価されている。
◆ 整備力:伸びと回りを両立させる“調整のスイッチ感覚”
整備面でも藤原は秀でている。伸び足と回り足の両軸で調整を行い、レースタイプに応じて数字上だけではなく“体感の違い”を重視する。
- 伸びが必要なまくり戦では遠心力が乗るペラ振りを
- 差し・逃げでは立ち上がりの出足を優先
- シリーズ前半は伸び、後半は回りに切り替えるという“スイッチ式調整”
こうした調整法により、藤原は初日から安定し、展開に応じて狙い撃ちする戦いもできるため、記念戦線でも舟足で信頼される選手になりつつある。
◆ 総括:万能ながら尖る、時代が求める“適応型の実力派”
藤原啓史朗は、特定の武器だけで勝負するのではなく、器用で安定しつつ、そこに“攻撃の尖り”を併せ持つ現代型レーサーである。
無理をしないが抜けられたときには迷わず仕掛け、伸び足が裏切ったときには次のターンで挽回する。
そのスイッチの切り替えと判断力こそが、万舟を狙える選手たらしめており、「舟券的に狙いやすい万能枠」を提供している。
今後、G1での優出増、SGの予選突破常連などのステップを踏めば、「万能のついでにタイトル」を取る実力派へと進化する可能性が高い。
攻撃と安定のバランスを体現する藤原啓史朗は、まさにこれからのボート界に必要とされる才覚型レーサーである。