ボートレース江戸川の極意 〜風と流れに愛された水面〜
ボートレース江戸川。
東京都江戸川区に位置する唯一の“首都圏水面”でありながら、ここはボートレースの常識が通用しない、唯一無二の難水面です。
全国24場の中で唯一「河川」に位置する水面であり、風と潮流がすべてを支配する場。同じ1マークでも、午前と午後では全く違うレース展開になり、1号艇が飛ぶ、万舟が飛び交う、それが江戸川の日常。
だが、それでも常連の“江戸川巧者”たちは、変化を読み切り、勝ち続けている。
江戸川とは、「環境を読む頭脳」「柔軟なターン」「勝負勘」のすべてが問われる、真のボートレース場なのです。
1. 「唯一の河川水面」=常に“生きた流れ”がある
江戸川最大の特徴は、何といっても自然の川(荒川)を利用したレース場であること。
このため、他場では考えられないような「潮の満ち引き=流れ」がレースに大きく影響します。
たとえば…
- 満潮 → 上げ潮(南から北へ)
- 干潮 → 下げ潮(北から南へ)
この「流れ」が強い日は、艇が思うように進まない、ターンで流される、外へ押し出されるなど、ターン自体が難しくなります。
選手たちは、「展示タイム」「スタート展示」「水面気配」を見ながら、水流の“クセ”を体で感じ取り、走り方をアジャストする必要があるのです。
これは、他場にはないスキルと読み。だからこそ江戸川は、「技術で勝つ」選手と、「合わせられず沈む」選手がはっきり分かれる水面でもあります。
2. 風が“全てを変える”江戸川の恐怖
潮だけじゃない。江戸川には「風の魔物」も住んでいます。
とくに影響が大きいのが“強烈な向かい風”。風速6〜8mを超えることも珍しくなく、それにより…
- スタートで思い切って踏み込めない
- インが押し切れず流れて差される
- 1マークでスピードを落とさないと飛ぶ
といった展開が多発。まさに“スタートの一瞬で勝負が決まる”どころか、風と波の前では「走りすらさせてもらえない」という恐ろしさすらあるのが江戸川です。
そのため、強風=波乱予想が定番の読み筋となっています。
中でも、強風+下げ潮(追い風+流れが同方向)という条件は、艇が流されやすく、センター~アウトの一撃が決まりやすい超波乱水面へと変貌します。
3. インは弱い? → 条件付きで「強くもなる」
江戸川は「インが弱い」とよく言われます。実際、全国平均と比べても1コースの勝率は低い(40〜45%)ことが多く、1号艇が飛ぶリスクは常に高い水面です。
ただし、実は「インが決まる日」もある。
ポイントは以下の2つ:
- 流れが穏やか(潮止まり)+風が弱い
- 乗り慣れた地元選手がインを取っている
この2条件が揃えば、江戸川でもイン逃げは十分に可能。むしろ流れが読みやすい分、乗りやすくなるため、「インでも逃げる」という展開になります。
つまり、「江戸川=常に荒れる」ではなく、“今日は荒れるのか?締まるのか?”を見極めるのが勝負どころというわけです。
4. “江戸川巧者”とは何か?技術+経験が物を言う
水面の複雑さゆえに、江戸川では「とにかく上手い選手が勝つ」という傾向が非常に強く出ます。
では、どんな選手が江戸川巧者なのか?
- 波に強いターン技術(波に浮かず、艇を抑え込める)
- 風と潮を読む経験値(過去の出走歴、支部内の情報網)
- 冷静なレース運び(無理なまくりではなく、差し判断ができる)
こういったスキルを備えた選手が、「展示タイムが悪くても結果を出す」のが江戸川です。
たとえば…
- 前田将太(福岡)
- 今井美亜(福井)
- 長田頼宗(東京)
- 萩原秀人(福井)
- 重野哲之(静岡)
などは江戸川巧者としても知られ、荒れ水面でも安定した走りを見せてくれる存在です。
5. 「中止」がある数少ないレース場
江戸川では、風速・波高が規定を超えるとレースそのものが中止になることがあります。
これもまた、自然を相手にしているからこその特徴。
この「中止リスク」は、舟券購入者にとっても重要です。
たとえば…
- 昼には成立していたが、夜のレースは中止
- 途中まで開催していたが、途中打ち切り
- 本場は開催でも、場外発売中止
といった事態も少なくありません。舟券購入の際は、必ず最新の水面状況や公式発表をチェックすることが必要です。
江戸川を制するための“5つの視点”
最後に、江戸川で勝つための予想ポイントを整理します:
- 風速・潮流の方向をまずチェック
→ 強風・追い潮は波乱のサイン - 展示タイムより“乗りっぷり”重視
→ タイム以上に水面対応力を観察 - 地元選手、江戸川出走歴の多い選手を狙う
→ データでは見えない“慣れ”が勝敗を分ける - イン逃げは“条件付き”で評価
→ 無条件信頼NG。風と流れ次第で変わる - 5・6コースの一撃も侮れない
→ 展開が崩れやすいからこそ、外の展開突きに妙味
江戸川は“荒れるから当たらない”水面ではなく、“読めたら勝てる”水面。
その読みに挑戦する面白さこそ、江戸川の醍醐味です。