Boat-Practice

羽野直也:行動力と冷静さが融合する“若き万能スピードレーサー”

ボートレースにおける勝負の要素は、スタートの速さと展開の読み。どちらか一方だけではSG戦線で戦い続けることはできない。
福岡支部の若き実力者・羽野直也(はの・なおや)は、その両方を兼ね備えた“完成度の高い万能型レーサー”である。

2023年に「第28回オーシャンカップ」でSG初優勝を果たし、一気にトップレーサーの仲間入りを果たした。持ち味は、スタートの速さと状況に応じた冷静な判断力。どの枠からでも自在な戦術を繰り出し、レースを支配する力を持っている。

本稿では、羽野のレースを以下の3つの切り口から分析していく。


◆ 1コース:スタート速攻&旋回制圧、“逃げで魅せる若き王道”

羽野の1コース戦は、“スタートから主導権を握る速攻逃げ型”。平均スタートタイミングは0.12〜0.13と安定して速く、SG・G1でもイン逃げの信頼感は抜群。

1マークでは握りすぎず、丁寧に回して出口で加速。2マークも冷静に回して逆転を許さない。スタートに裏付けされた安心感に加えて、旋回でもミスをしない完成度の高さが光る。

「荒れない・崩れない・信頼できる」イン戦は、舟券の本命軸として非常に頼もしい存在である。


◆ 2コース:差し・まくり差しを自在に使い分ける“切り替え型セカンド”

羽野の2コース戦は、相手やスリットの並びに応じて戦法を切り替える、“状況対応型のセカンド戦術”

  • スリットが揃えば鋭く差し
  • センター勢が覗いていれば握りに転じて、展開を突く
  • 差しが届かなくても、2マーク勝負に持ち込む機動力も持つ

差しの精度も高く、インとの差を冷静に見てから最短距離を突くのが特徴。結果として、2着、3着にしっかり絡む“舟券向きの2号艇”である。


◆ 3・4コース:自在さが真骨頂、“まくり差し×差し”のハイブリッド型

羽野の本領は、センターからの“自在戦”。スタートからの攻めにも強く、展開を読む力と合わせて、勝負を作る“まくり差し職人”といえる存在だ。

  • 3コース:スリットで覗けばまくり、揃えばまくり差し
  • 4コース:カドからまくり差し、内を突く差し、状況次第で握りも選択

これらを冷静に、かつスピーディに切り替えることができるため、センターからの1着率・2着率も非常に高い。
無理に握るよりも、“勝てる形を選び抜いて攻める”判断力の高さが、羽野の真の武器である。


◆ 5・6コース:展開を読むスピード型、“外でも勝負になる強さ”

羽野の外枠戦も見逃せない。特に5コースからは、センター勢が攻めた後に“まくり差しで浮上”するパターンが多く、舟券にしっかり絡んでくる。

6コースからも、差し構えから道中で内を突いて2着浮上するケースがあり、決して“枠なりで終わらない”対応力を見せる。

また、SG戦などで5・6号艇に入った際も、決して消せない存在である。展開と足に合わせて“勝てるパターン”を見つけ出す力があるからこそ、外枠でも期待値を保てる実力者といえる。


◆ 整備力:回り足重視のスピード仕上げ、“出足と旋回力の融合”

羽野の整備方針は、基本的に“レースで勝つための出足+回り足”を重視。スリットで飛び抜ける伸び型ではなく、コーナーからの加速力と2マーク旋回後の押しを強みにする整備が基本となる。

特徴的なのは、シリーズ中盤以降に舟足が完成する“育成型調整”である点。初日や2日目ではまだ中堅だが、整備・ペラ調整を繰り返して、3日目以降に「出足が仕上がってくる」パターンが多い。

そのため、記念戦線では“シリーズ後半に怖い選手”として存在感を放つ場面が多く、整備力の裏付けがあるからこその安定感と爆発力が共存している。


◆ 総括:万能型×勝負勘=現代レース界の理想形

羽野直也は、どのコースからも戦術を変えられ、スタートも速く、整備も実戦向けに仕上げられる――“完成度の高い万能型レーサー”である。

  • 1コース:安心して任せられる逃げ型
  • 2コース:差しも握りも器用に対応
  • センター:展開を突くまくり差しで魅せる
  • 外枠:展開読みで浮上する“勝負勘”

これらのバランス感覚に加えて、冷静な判断力と安定感ある旋回が羽野の武器であり、SG優勝という結果もその証明である。

今後は、複数回のSG制覇・グランプリ制覇といった“王道の実績”を積み上げるフェーズに入っており、若手から中堅へと移るタイミングでもその存在感は揺るがない。

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