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桐生順平|“バランスの鬼”が魅せる、現代ボートレーサーの完成形

SG・G1戦線でここ10年、常に安定して上位を走り続ける男がいる。
それが、埼玉支部のエース――桐生順平(登録番号4444)だ。

2020年以降のSG出場数、優出回数はトップクラス。
だが彼の凄さは、タイトルの数以上に、“勝てる条件を自分で作れる力”にある。

鋭いスタート、バランスの取れた旋回力、節間で仕上げてくる整備力、そしてどのコースでも迷わず攻める勝負勘。
桐生順平は、現代ボートレースが求めるすべての要素を高次元で備えた“万能型レーサーの完成形”である。


コース別に見る「桐生順平の勝ち筋構築力」


■ 1コース進入時|スピードを殺さない“先マイ”

  • 進入率:約98%
  • 1着率:約85%前後(SGでも80%台)
  • 平均ST:0.11〜0.12(全国屈指)

桐生順平の1コースは、スピードと安定の融合
他の選手が「守る逃げ」なら、彼は“仕掛けて逃げる”スタイルを貫く。

最大の特徴は、スタート後に一瞬早く加速を完了させ、誰よりも早くハンドルを入れられる舟足の作り方
この「先マイ力」により、スロー勢との比較で0.05差しかなくても“最内で先に回ってる”状態を作れる

展示で出てなくても逃げるのは、この“初動の鋭さ”に秘密がある。


■ 2コース進入時|差し精度が異常に高い

  • 進入率:約97%
  • 1着率:約26〜28%
  • 2連対率:約60%以上
  • 平均ST:0.12〜0.13

桐生の2コースは、迷いなき差し型
旋回フォームはコンパクトで流れず、ターンマークの最深部を正確に突いてくる技術はSGでも屈指。

さらに、2Mの道中戦でも差し返し率が高く、展開待ちではなく“自ら作っていく差し”といえる。

同じ差し屋でも、峰や茅原が“待ちの構え”を取るのに対し、桐生は「攻める差し」スタイル。
舟券の信頼度も高い。


■ 3コース進入時|全速戦とまくり差しの見極め

  • 進入率:約90%
  • 1着率:約33%
  • 平均ST:0.11

ここが桐生の最大の武器コース
スタートからの“0.11〜0.12”の全速戦で、一気に主導権を握るレースが多い。

特に、“まくるか・差すか”の選択が非常に早く、スタート後の艇団の配置を一瞬で読んで即座にまくり差しに切り替える判断力はさすが。

2023年のグランドチャンピオンでは、3コースから全速のまくり差しで予選1位通過を決めた。
「センターから勝てるSGレーサー」としての証明だ。


■ 4コース進入時|カドからも差してくる自在型

  • 進入率:約85%
  • 1着率:約28%
  • 平均ST:0.11〜0.12

桐生はカドからでも無理に握らない
むしろ、「内が潰れる流れ」を読むと、一瞬で差しに切り替えて捌いてくる
この自在性があるから、4コースの勝率も安定して高い。

また、桐生の4コースには“抜ける”舟足が常にある。
ターンで届かなくても、バックや2Mでじわりと浮上する道中スキルが極めて高く、荒れた展開でも舟券に絡む率が高い。


■ 5・6コース進入時|展開読み×鋭いターン力

  • 5コース進入率:約60%、1着率:約18%
  • 6コース進入率:約40%、1着率:約8〜10%
  • 平均ST:どちらも0.12台をキープ

5・6コースからでも、桐生の勝率は全体平均より常に上
これには、“攻めに出るとき”と“内を待つとき”のメリハリがある。

5コースなら:
→ スタートで伸びてれば握る、なければまくり差し

6コースなら:
→ 展開が荒れると見れば一撃を狙うが、基本は2・3着狙い

特に、6コースでも舟足が出ていればしっかり握って届くターン技術があるため、「外だから消し」とは絶対にできない選手。


整備力・調整力|センスだけでなく“理詰め型”

桐生順平の整備は、「回り足・出足の微調整型」
特徴的なのは以下:

  1. 回転数の上げ下げが極めて緻密
  2. 湿度・気圧の変化に合わせた“節間調整”が得意
  3. 「展示では普通→本番で伸びる」傾向が多い

彼は“コメントが控えめ”な選手の代表格で、「悪くはないですね」「普通くらいです」と言いながら、
実際は節間でしっかり“乗れる足”に仕上げてくる

特に出足型にセッティングしながら、直線も落とさない“バランス型の整備”は秀逸で、
SG常連組の中でも「整備の安定感」で信頼されている存在だ。


総括|桐生順平は“万能型の現代エース”

桐生順平という選手を一言で表すなら、“バランスの鬼”。
どのコースからでも勝てる。ターンでも勝てる。整備でも崩れない。そしてスタート精度は全国屈指。

SG戦線で「目立たないようで確実に優勝戦へ乗ってくる選手」といえば、真っ先に名前が挙がるのが彼だ。
スタイルは派手でなくとも、“勝つために必要な要素”を、すべて高水準で備えている

現代ボートレースのあるべき姿を体現する、静かなる総合力型のエース――それが桐生順平である。

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