Boat-Practice

峰竜太|数字で読み解く、コース別“勝ち筋”と整備センス

ボートレース界には「強い選手」は多い。
だが、「どこからでも勝ちにいける選手」となると、名前は絞られてくる。

その筆頭が峰竜太(佐賀支部)だ。彼はスタート力、旋回力、整備力すべてを高水準で備え、さらに状況に応じて勝ちパターンを変える判断力を持つ。

本稿では、各コースでの戦術と成績を数値とともに掘り下げ、さらに整備面での傾向にも焦点を当てて解説していく。


■ 1コース進入時|“逃げるだけではない”勝負構成

  • 進入率:ほぼ100%
  • 1着率:約85%(SGでは80%前後)
  • 平均ST:0.13

峰の1コースは、単なる“強イン”ではない。仕上がりに応じて勝ち筋を柔軟に変えるのが特徴だ。
例えば、直線が弱いと判断すれば「先マイ+出口の伸び残し」で勝つ。逆に舟足が仕上がっていれば、スタートからやや強めに踏んで先攻する。

ターンマークの回り方も、いわゆる“旋回型イン逃げ”ではなく、早めに内を向けて握りながら流さずに回る独特の形
スタート展示ではあまり目立たず、本番での“キレ”を見せるタイプで、逃げの完成度が非常に高い。


■ 2コース進入時|勝率は高くないが、勝負勘は光る

  • 進入率:約97%
  • 1着率:約25%(2連対率:約50%)
  • 平均ST:0.14

2コースの峰は、差し型でもまくり気味の握り差しを好む
ダッシュ勢のスリットが甘いと読めば、「ツケマイ風差し」で相手を封じにいくパターンも見られる。

2023年のSGボートレースクラシックでは、2コースから強引に握り込み、2マークで差し返すという2段構えの攻めで1着。
このように、「スタートで出られなかったときの保険」も用意しているのが峰の強さ。

数字上は1着率は高くないが、2着・3着の拾い方が絶妙で、舟券的にも非常に信頼できる位置だ。


■ 3コース進入時|まさに“峰ゾーン”

  • 進入率:約90%
  • 1着率:約35%
  • 平均ST:0.13

ここが、いわば峰竜太の必殺ゾーン
スタートで外勢が攻めてくれば、冷静に差し構え。逆に、スロー勢が弱ければ迷いなく全速のまくり差しを放つ。

特に特徴的なのは、“伸びがなくても勝負に出る”姿勢。
これは整備段階で「ターン足+出口の向き」に仕上げているからこそ、スリットからターンマークまでの短い距離でも持ち味を出せるのだ。

実際に、2023年のG1九州地区選手権(芦屋)では、3コースからまくり差しで優勝をさらっており、
「迷ったらまくり差し」が峰の哲学でもある。


■ 4コース進入時|スローダッシュの中間を制す者

  • 進入率:約85%
  • 1着率:約30%
  • 平均ST:0.13

4コースも得意。センターからの“絞り”は見せないが、スリットから見て相手の伸びが足りないと感じれば、ツケマイ or まくり差しの2択で構える。
その選択の“読み”が他選手とは別格だ。

彼はダッシュの4コースより、スローの4コース(カド受け)からの方が好成績を残す傾向があり、
スタート後に水面や風の変化で伸び返す艇の挙動を見て、差しに変更する柔軟さ
がある。


■ 5コース進入時|まくり差しの芸術

  • 進入率:約60%
  • 1着率:約20%
  • 平均ST:0.14

「峰の5コース=まくり差し」と言っても過言ではない。
展示タイムが出ていなくても、5コースではターンの出口でスムーズに内を突ける形に持っていくのが巧みだ。

2024年初頭のG1(唐津)では、5コースから大外まくり差しを決め、バックで3艇抜きという離れ業も見せている。

このコースでは“スタートで行く”のではなく、1マーク前の艇団の並びを読む力がものを言う
データ的には一見劣って見えるが、峰が5コースにいると舟券の波乱度が一気に上がる


■ 6コース進入時|消極的ではない“攻めの最外”

  • 進入率:約40%
  • 1着率:約10%
  • 平均ST:0.15

6コースでも峰は決して消極的ではない。
むしろ、「他艇が崩れる」と読んだときには、強気に握り切るレースも多い

特に注目したいのが、“展示では普通、しかし本番では伸びてくる”パターン。
これは峰が6コース用に回転重視の出足+初動伸びセットを仕込んでいる証拠だ。

また、6コースから1マークまでのライン取りも非常にタイトで、流されずに“ターン出口で詰める技術”が高い。
つまり、6号艇でも「2着以上を拾える」力を持っているということだ。


■ 整備力・調整力|“競技者”から“職人”への進化

峰竜太の近年の変化で、最も顕著なのが整備力の向上だ。
以前は「レースセンスとスタートで勝つタイプ」と言われていたが、現在は“舟を仕上げて勝つタイプ”へと進化している。

彼が整備で重視するのは、以下の3点:

  1. ターン回りの出口の向き
  2. 出足と回転の調整バランス
  3. ピット離れとスタート時の“立ち上がり感”

ギアケースを大胆にいじるよりも、プロペラの微妙な“たわみ”の出し方にこだわる傾向が強い。
また、コメントでは「足は普通」と言いつつも、最終日には全く違う仕上がりにしてくることが多い

これは、節間の中で他艇と比較して“自分の舟の位置づけ”を冷静に調整しているからこそできる芸当であり、
単なるテクニシャンではなく、整備を“勝つための武器”として扱える数少ないレーサーといえる。


■ 総括:どこからでも勝てる、そして仕上げてくる

数字で見ると、峰竜太は確かに「内枠で勝つ選手」に見えるかもしれない。
だが、実際にはコースに応じて“勝ち筋”を構築する能力と、それを整備で裏付ける技術がセットになっている。

そしてなにより、彼の強みは“勝負勘”。
状況判断と整備技術、そして実行力がかみ合ってこそ、現在の「SG戦線トップクラスの常連」としての地位がある。

どの枠に入っても、「今日の峰はどう攻めてくるか」と考えるだけで、ファンも舟券師も楽しめる。
それこそが、峰竜太という選手の最大の価値なのだ。

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