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山口剛|「攻守自在のオールラウンダー」広島支部が誇る実戦派エース

山口剛(やまぐち・つよし)は、いわゆる“スタート一撃型”ではない。
それでいて、コースを問わず結果を出し、地味に思えるレースでも舟券に絡む確率が非常に高い。
彼の強さは、スリット勝負や豪快なまくりではなく、状況を読む力と、それに応じて自在に戦術を変えられる柔軟性にある。

そのレース運びは派手さを感じさせない一方、ファンや記者からの信頼は厚く、
「いぶし銀」「職人」「玄人向け」など、しばしば“目立たず勝つ選手”として語られる。

今回は、そんな山口剛のコース別戦術、整備力、そしてその本質に迫る。


コース別戦術とスタート傾向(2023年〜24年前期データより)


■ 1コース|逃げ切る力は“目立たないが抜群”

山口の1コースは、豪快な“押し切り逃げ”ではない。
スリット後に他艇を寄せつけないターン技術と舟足の安定感で、静かに、そして確実に逃げ切る。
展示では派手に出ていなくても、本番で舟が向く。ファンの間では“鉄板1号艇”と称されるのも頷ける。


■ 2コース|内寄りでも冷静に差して拾う

2コースでは、スタートで張り合うというよりも“差して生き残る”スタイル。
展開に巻き込まれそうな場面でも、差し場を逃さない判断力と旋回精度が光る。
まくり返すような強襲は少ないが、そのぶん崩れない安定感があり、舟券的には2・3着の相棒として重宝される。


■ 3コース|まくり差しの精度が高く、勝負にも出る

3コースからは、展開を読む力と旋回技術でまくり差しを狙うケースが多い。
特筆すべきは、内寄りの隊形に対して握らず差す判断の的確さと、それを支える舟足の安定感。
展示で舟足が見えたときは、ここからの勝負駆けも十分可能だ。


■ 4コース|勝負所では握ってくる攻撃型

山口の4コースは、他コース以上に“勝負に出る”構えが見える。
スリットで覗けば迷わず握るし、見劣る時は差しにシフト。まくり切るには足りない舟足でも2M勝負で逆転する道中力が武器。
展示気配が普通でも、本番では上位進出してくるため、侮れない。


■ 5・6コース|着拾いより“逆転”に舵を切る

山口は外枠でも“諦めずに展開を読む”選手。
5コースからの差し・まくり差しで突き抜けるシーンも多く、6コースでは捌ききれずとも着順を落としづらい。
外でも舟足さえあれば、舟券の相手に据える価値が十分にあるタイプだ。


整備力と適応力|“静かに合わせて勝つ”玄人好みの仕上げ職人

山口剛の整備は、他のトップレーサーのような“展示から伸びる舟”を作るスタイルではない。
むしろ、「自分が使える領域だけを確実に伸ばす」という極めて現実的かつ玄人好みの調整スタイルだ。

特徴は以下の通り:

  • 朝の試運転を重視し、回転と乗り味の調整に時間をかける
  • ギアケースの細かな調整や、湿気・水質に対する微調整が多い
  • 整備コメントは少ないが、「悪くない」の一言が出れば舟券信頼度は高い

山口の整備は、“舟を合わせにいく”より“自分のリズムに引き寄せる”感覚で組み立てられている。
伸びは出ないが、それでいい。彼にとっては、しっかり回れることが勝ちへの最短ルートなのだ。


総括|山口剛は「結果に波がない、玄人の味方」

山口剛というレーサーは、目立つタイプではない。
だがそのぶん、毎節・毎走で安定した結果を出し続ける信頼性がある。

どのコースでも舟券に絡み、整備では自分のスタイルを崩さず、勝負所でだけしっかり動いてくる。
そのスタンスは、まさに「玄人好みの万能型レーサー」。

派手な一撃より、確実に着を積み上げていく実戦派
今後も記念戦線で堅実に勝ち上がる山口剛の姿は、舟券ファンの心強い存在であり続けるはずだ。

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